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蒟蒻脱●●(きかんげんてい☆)
日々思いついたSS投下場所
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8月です。
夏コミお疲れ様っした!
空虎の新刊が出たりしたんですよありがとうございました~

そんで私は自他共に認めるヒゲクラスタなのでヒゲ剃り萌えると言う話からなんか出来た。しぶにもあげてあります。
おじさんに脛毛、はまあありかもだけどバニーちゃんに脛毛とかヒゲはあるわけないでしょ?!という方はリターンお願いします。

つまりそういう話です。
ヒゲ?脛毛?どんとこい!な方は続きからどうぞー

 ぼんやりした頭でゆっくりと天井を見た。見覚えのない景色に軽く首を傾げ、そうしてああ、と1人納得する。ここはアポロンメディアの社員用仮眠室だ。そう広くない部屋にベッドがいくつか並んでいて、ロッカーだの菓子やレトルトなどの非常食が詰まった段ボールだのなんだかよくわからない健康グッズや癒しグッズが乱雑に置かれている部屋はお世辞にも片付いているとは言えないのに何故か落ち着く。メディアに携わる者はおよそ整理整頓とか規則正しい生活とかとは縁遠くなるものだと虎徹は知っていた。
「あーあ…」
 ぐい、と両腕を伸ばしてから上体を起こすと、遮光カーテンの隙間からこぼれる光で結構な時間だなと苦笑した。
 なんで仮眠室で一夜を明かす羽目になったのかと言えば、単純に出動時間が延びたからだ。夕方発生した事件は立てこもりの銀行強盗で、これがなかなかの根性を見せた。余計な根性を見せた犯人のおかげでようやく事件が解決し、ヒーローたちが解散になったのは明け方も間近という時刻で、会社に戻ってスーツを脱いでメディカルチェックを受けていたらもはや瞼が一生離さないよ!というくらいくっつき始めたので面倒になって仮眠室の空いていたベッドに倒れこんだ、ところで記憶が途切れている。
 くわわ、と派手にあくびをしてベッドから降りると、いつの間に着替えたのかトレーニングウェアの上下になっていてまた首を傾げる。
「いつ着替えたんだ?」
 さっぱり記憶にないのに、ベッドの脇にはハンガーにかかったスラックスとベストにシャツ、ネクタイ。ハンチングはテーブルの上に置いてある。
 シワにならないように脱いだならわざわざこんなの着ないでパンイチで寝てるよ俺、と軽く苦笑しながらカーテンを勢いよく引いた。
「うおっまぶし…っつーかやばくないか時間、何時だ」
 予想外の陽の高さにぼやきながら振り返ると、隣のベッドに蛹のようなものがあった。何これ、てゆかもしかしなくてももしかして?
「………ん…」
 蛹だか繭だか、丸まったブランケットの下から陽の光に反応したのかくぐもった声がした。端からこぼれる見覚えのある金髪。
「…えーと、もしもし?もしかしてバニーちゃん?」
 蛹に近づいてゆすりながら声をかけると、うーだとかあーだとかなんだかとても不満そうな声がした。そうしてゆっくり中身が顔を出す。
「………こてつ、さん…?」
「おお、おはようバニー?どうした?もう朝もいい時間だぞ?」
 眼鏡を掛けていないバーナビーをそういえば久しぶりに見たな、と思いながら半目の顔の前でひらひらと手を振った。
「なんで虎徹さんがこんなとこにいるんです…?」
 しかも寝ぼけてた。
「バニーちゃん、ここはおまえんちじゃなくて会社の仮眠室だよオーケイ?」
 なんか可愛いな、と唇の端を少し上げながら言うと、眉間にしわを寄せて一度眼を閉じて、開けた。
「…お目覚め?」
「………はい」
 もそもそと頷きながら蛹から出ると、バーナビーも同じようなトレーニングウェアを着ていた。
「これ、着替えさせたのおまえ?」
「…そうですよ?あのままじゃシワになるって言ってるのに貴方ときたらもう寝るの一点張りで」
 もうホント大変でしたよと言ってバーナビーは珍しく大欠伸をした。多分その着替えの所為で虎徹より睡眠時間が少ないのだ。
「別にクリーニングでよかったのに」
「僕が嫌だったんですよ」
 この年若い相棒は妙なところで潔癖症だ。はいはい、と軽く肩を上げる。
 もはや出勤時間はぶっちぎっていて今更慌ててもどうにもならないし、今に至るまで呼び出しも催促もないということは会社も上司も所属ヒーローたちの状況を知っているということだろうと勝手に解釈してのんびり身支度を始めた。
 あまり血圧が上がらないのか、バーナビーがベッドの上でボンヤリしたままとんでもなくゆっくりした動作で動くのを見ていて、さすがにのんびり過ぎるだろ、と「はいバニーちゃんベッドから降りて、ブランケットはいいから」言われるままに誘導にしたがってベッドから降りたむき出しの両足が、日の光を反射してキラキラしている。さすがイケメンは脚まで光るかと思って首を傾げ、おもむろに座り込んで脛をざらっと撫でてみた。
「わあああなにすんですかっ」
 そこで目が覚めたのか、バーナビーはヘンな悲鳴を上げて両足を引っ込める。
「…いっやー…バニーちゃん脛毛も金髪なのな!おじさん思わず触っちゃったよ?」
 キラキラ光っていたものの正体は脛毛で、まあ二十歳を超えた男に脛毛があってもそれは当たり前だけどさすがに金髪ってのは見たことなくて感動しちゃったよははは、と言うと今にも泣きそうな瞳で唇を震えさせながら何か言いたそうにしていたバーナビーが「もう知りません」と視線を外した。顔がうっすら赤くなっているところがまた。
「いいじゃん金髪の脛毛目立たなくて。俺なんかもー大変大変」
 言いながら顎に手を当て、その感触にああ、朝だからなあと思いながらとにかくシワにならないようにしてくれたシャツとスラックスに着替えた。
「…なに、バニーちゃん何か珍しいもんあるの俺の顔」
 気がついたらじっとこちらを見ているから苦笑混じりに聞いてみると、別に、とまた顔を逸らした。変なの、と首を傾げて適当にその辺りの箱を漁る。何度か使っているこの仮眠室にはテレビマンたちがいつ泊まりになってもいいように実にさまざまな日用品が詰め込まれたダンボールがいくつか積んであって、その中に洗面用具ももちろんあった。ただし、若干掘り返す必要もあったが。
「ほいバニーちゃん、歯ブラシとか」
「…ありがとうございます」
 ひょい、と洗面用具のセットを二つ引っ張り出して片方を投げると、いつもの黒いアンダーシャツにいつの間にか着替えていた相棒が危なげもなく受け取った。後ろ見ないで投げたのにと思ったら「それより危ないですよ虎徹さん」と呆れたように続く。
 仮眠室のあるフロアの男性用トイレは、想像通り会社に泊まったよれよれの会社員たちがいつものように身支度を整える場所になるためかなり混雑しているのだが、今日は時間が多少ずれている所為か先客はいなかった。おおラッキー広く使えるとビニールのポーチから歯ブラシを出して、髭剃りを出して、髭剃りローションを塗って、あの特徴的なヒゲを整えるために剃刀を当てる。もういい大人なので、毎朝髭剃りを当てるのは当たり前だったが、ふと隣で同じように身支度を整えている相棒はヒゲとか生えなそうだなーと思ってちらりと視線を投げると、やっぱり同じように髭剃りローションを手のひらに出していてちょっと驚いた。
「………バニーちゃん髭剃りすんの?てか生えるの?」
 思わず零れた言葉に思い切り眉を寄せて、それからまた頬を赤くして「当たり前でしょう!」と目尻を吊り上げた。
「なんか、誤解しているようですけど僕だって成人男性なんですから!そりゃ虎徹さんよりは薄いですけど!身だしなみとして当然でしょう!」
 まあ、それはそうなのだ、けれど。
 特にバーナビーはその顔も商売道具の一つだ。もっとものすごく手間も時間もかかるお手入れをしているに違いない。見たことがないからそう思うだけで、なんとなくいつもの綺麗な顔で出来上がっているものだと思っていた。冷静に考えたら人間は生きているのだからそんなことはないはずで、まあそうだよなー、と間延びした答えを返しながら再び剃刀を動かす。
「いやーなんか新鮮だなーと思ってさー?バニーちゃん髭なんて生えるんだふーん…あっもしかしてヒゲも金髪なの?」
「余計なお世話ですっ無駄口叩いてないでさっさと支度してくださいよ!」
 なんだよ気になっただけじゃんと返すと、どういうわけかバーナビーは口元を押さえて視線を逸らしたままだった。耳まで真っ赤にして。
 もしかして。
「…バニーちゃんは人前で髭剃りとかダメな人?」
 言いながら剃刀を置いて、手についたジェルを洗い流す。
「別、に、そんなわけな…っ何で近付くんですかちょ、なに」
 うん、とにじり寄って唇を笑みの形に吊り上げた。
「ねえ、それ、触らして?」

 そこで何で頷いちゃったんだろう最近どうもあの人に甘くていけない、と思いながらへーとかほーとかしきりに多分感心しているいい年のおじさんから目を逸らした。
「…も、いいですか…いい加減にしないとさすがにロイズさんだって怒りますよ」
 成人男性として体毛の色素が薄いということを実はとても気にしている。それを指摘されてなおかつ触らせろとか言う人に、なんで頷いてるんだろう。最初こそ恥ずかしくてどうしようと思っていたけれど、髭剃りローションまみれの指先がよく見ないと見えないくらいの金色の体毛をざらざらと撫でて行く感触が、困ったことにだんだん慣れてきたところで心底感心したように虎徹は言う。
「バニー、お前ほんっとどこもかしこもキレーなんだなー」
「………ハァ?」
 それは、だから、いい年の男に言うセリフじゃないだろう、褒めているにしてもと気の抜けた返事をしてしまった。
「いや、ホントにね」
 そう言って笑うと、おじさんが剃ってあげよっかー、とか危険なことを言いだしたから却下した。近い距離にいたその人を押し返して、身支度を再開する。
 そうだ、どうせ髭剃りなんてしてもしなくてもよほど放置しなければ目立たないから実は結構さぼったりしていたのに、今朝に限って洗面台に立ったのはどう考えても隣でいまはのんびり歯磨きしているこの人のせいだ。
「…まったく…」
 なんで、寝起きでぼんやりした頭で眼鏡をかけて、最初に目に入ったのがあの特徴的な顎髭、の周りにぽつぽつ見えた無精髭なんだろう。
 それを、なんで。
「っありえないだろ…っ」
 触りたいとか、思った、なんて。
 混乱した頭を整理するように顔を洗って勢い余って濡れた前髪を掻き上げると、ほい、と目の前にいいタイミングでタオルが差し出される。
「え、あ…ありがとうございます…」
「おう」
 タオルを受け取って水滴をぬぐう様子を、何故かその人がじっと見ている。
「…なんです」
 落ち着かない。なんだかドキドキする。ただ、その人が隣にいて、こっちを見ているなんてよくあることなのに。
「いや…」
 そうしておもむろに、つるりと頬から顎を撫でた。
「ふぇっ?!」
 変な声が出た。
「おおツルツル!うーんさっきのざらっとしたのも新鮮だけどやっぱバニーはこっちの方がいいな!」
「何言ってんですかこのおじさんはっセクハラですよ!ホントにセクハラですよっ」
 感触が違くて、驚いて、変な声を上げてしまって、それで。
 いろいろごちゃごちゃした挙句にセクハラです!なんて、どこのOLだと心の中で叫びながら。
「えー、甘いよバニーちゃんセクハラっていうのは」
 ずい、と目の前に琥珀色の瞳が迫ってきて。囁くように唇ごと。
 こういうのを言うんだよ、とか。
 反論も溜息も閉じ込めた、深い口付けで全部持って行かれた。

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